T 大学体育
1.茨城大学の体育改革
平成2年の大学設置基準の大綱化を受けて多くの大学の教養体育の教科名から、「体育」がはずされました。その理由の一つは従来の「体育実技」の内容が「レジャー」のようにとらえられてしまったことに対する反省であり、もう一つは高等教育機関にふさわしい体育を模索した結果でもあります。
茨城大学の体育の授業も教養教育の体育は、従来の「保健体育科目」から「健康・スポーツ科目」という区分名に、授業科目は「体育実技」「保健」から「身体活動」・「スポーツ実技」という名称に変更されました(「保健」を継承する科目として総合科目の中で「ヒトの健康」という授業を行っています)。
また、平成11年度の改革によって専門教育では、教員養成系課程に従来どおり「保健体育選修」を置き、新たに新課程に「スポーツコース」と「健康コース」を設置しました。(平成8年度改革では「スポーツ文化コース」が設置されていたが、平成11年度に「スポーツコース」へ継承された。)これらは、従来のように学校場面だけでなく、社会のさまざまな場面で活躍できる人材を養成することを念頭に、社会体育指導者や健康運動実践指導者を目指して専門分化した結果です。もちろん研究対象としての広がりも反映しています。何となく体にかかわることがらはすべて「体育」という一言で片づけられてきましたが、社会のニーズに応えるためにより明確にその対象を示した結果でもあります。
とは言え、従来の「体育」が全て「スポーツ教育」や「健康教育」になってしまったわけではありません。学生組織は育成すべき人材の種別にあわせて3つに区分されていますが、当然教育内容としても研究領域としても共通の基盤を持っています。それは、まさに「身体」とその「活動」です。 このようなことから、茨城大学では、教養教育として全ての学生に対して体育の基盤である「身体活動」を必修とし、選択科目として「スポーツ実技」、総合科目として「ヒトの健康」を設置しています。また、専門教育として、共通基盤である「身体」に対する深い理解を求め、「身体活動」に重点を置き、その上でさらに学校体育の専門家、社会体育の専門家、健康教育の専門家になるためのそれぞれの専門科目が設置されているのです。2.新たな懸念
茨城大学では、ひとまず従来の「体育」をとらえ直しつつ、上述した理念に基づきカリキュラム改革や組織改革に取り組んできました。こうした枠組みづくりは、ほぼ完成したと言えるでしょう。
しかし、一方で懸念も広がっています。「身体」や「スポーツ」や「健康」だけを追い求めそれぞれの専門分化が進んでしまうと、従来の体育が備えていた総合的で領域横断的な豊かな教育基盤が崩れてしまうのではないかということです。つまり、広く他の領域とは異なる「体育」という領域が共通に持っているはずの何かを見失ってしまう可能性が出てきたのです。このようなことから、もう一度「体育」そのものを広くとららえ直しておく必要があるでしょう。