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ホームコートゲームの真実(11/14/1996木)


 午後,練習を見に行くと非常にリラックスムードでやっていた。練習が終わり,ピックアップゲームをしようかと思ったが,Jさんのところへ行ってみることにした。彼は,なぜか一人だけ忙しそうにしていて,しばらく待った後先週はいろんな情報がいっぺんに入ってきて混乱していたことを告げた。彼はジム・ハリックコーチと話をしたか?と尋ねるので僕は話はしていない。Jさんはどうか?と逆に尋ねたら彼も話をしていないという。何となく不思議な気がした。彼は,これからSコーチと話があるから一緒に来るかというので,久しぶりにバスケットボール・オフィスへ顔を出した。何となくムードが今までと変わってしまった気がして,ちょっと離れていたが,Dさんに練習日程が変更されているようなのでそれを尋ねたところ,来週ぐらいまでに新しいものを作っておいてくれるとのことであった。JさんはSコーチをはじめそこにいたスタッフといつものように話し込んでいた。

 今日は男子の試合の前に女子の試合が5時から始まる。すでに4時30分ぐらいになっていたので女子の試合を見るためにチケットを買おうかと思っていたが,Jさんによると男子の試合のチケットで入れるとのこと。ちょっと早いかとも思ったが,Jさんと分かれて試合会場へ入った。

 女子の試合はスロバキアのクラブチームとの対戦であった。僕はウォーミングアップの様子を見ていて,「これはかなわないな」と思っていた。案の定,試合が始まるとすぐに10点差がついてしまった。ところが,何と不思議なことにUCLAは10分過ぎに逆転して10点以上も差をつけてしまったのだ。それもそのはず,本当にこれでもバスケットボールの試合なのかと思うぐらいにあからさまに審判の笛がUCLAに偏っているのである。とにかく開いた口がふさがらず,呆れてしまうどころか全くおもしろくなくなってしまった。しかも,本当に少ない観客しかいないのだが,みんなそれが当たり前のようにはしゃいでいるのである。この国の人たちはこんなにずるいのかと思ってしまった。ジム・ハリックコーチの問題では「ルール違反はいけない」と口々に言うくせに,こんなにあからさまに偏った笛を容認して楽しむあたりの感覚は僕には全く理解できない。スロバキアの選手もさすがに嫌気がさしていたようだが,それでも後半に入ると底力を発揮して20点ぐらい離して勝ってしまった。国際試合やアウェイの試合では,こういうことが当たり前で,それでも勝たなくてはいけないのだろう。僕は,まだまだ甘いのかも知れない。

 男子の対戦相手は,ドイツのナショナルチームであった。ウォーミング・アップを見ていて全体的にサイズは大きいけれども,そんなに骨のあるような選手が見受けられなかった。UCLAはファールゲームをされると層が薄いだけにちょっとは絡むことも予想されるが,何しろ女子の試合で審判がUCLAに不利な笛を吹くはずなないことを思い知らされていたので楽勝になるだろうと思った。試合開始直後は,この前の試合のイメージが残っていたのかディフェンスもオフェンスも甘く立て続けにやられた。すかさずタイムアウトをとったのは良かった。その後,少しずつディフェンスが効いてきたのと,案の定審判の笛でドイツチームは少しずつペースを乱し,得点が離れていった。それでも思ったほど離れなかったのは,やはりJM選手とJH選手の甘さが原因だろう。なんとJM選手は足をつってしまったのである。いかに普段自分に負荷をかけていないかが露呈した形となった。最後にまた控えの選手を出したが,BM選手だけが自信をもってプレイしていたので良かった。やっぱり他の控えの選手もレギュラー陣に混ぜて出してやった方がいいように思う。

 僕の席の前に老夫婦がいてしきりにUCLAの応援をしていた。ハーフタイムの時にJさんがやってきてDさんのご両親であることを教えてくれた。僕はうまく挨拶ができなかったが,本当にいつもお世話になって感謝していることを伝えた。ちょうどそのお父さんがロサンゼルスタイムスのスポーツ欄を読んでいたが,そこには例の事件のことが掲載されていた。

 夜になっていたが,帰りにロサンゼルスタイムスを購入しアパートで読んだ。例のディナーの報告書の内容が発表された模様。それによると,UCLAの2人の選手は別のテーブルについていたらしい。ジム・ハリックコーチは支払いがまとまっていることはその時知らなかった。ジム・ハリックコーチの弁護士は,「何もNCAAのルール違反はしていない。昨年の契約通り5年分の給料を支払うべきだ。」と主張している。また,嘘の報告書にはMコーチの奥さんとジム・ハリックコーチの奥さんの名前が連なっていたが,Mコーチは嘘はいけないと思って正直にディレクターに話した,ということであった。どうやら泥試合の様相が強くなってきた。よく考えてみるとMコーチはUCLAの出身者である。今日のバスケットボール・オフィスの様子が何となく変に思えたのは,この新聞の影響だったのだろう。