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スタッフとの交流(11/21/1996木)


 雨があまりにもひどいので車で大学へ向かうことにした。3時30分ぴったりにつくと,選手はミーティングと昨日の試合のビデオ観戦のためロッカールームへ入っていく。マネージャーがコートでシューティングなどをしていたが,そのうちの一人J君が1対1をやろうと言ってきた。僕も身体を動かしたかったので彼と1対1をやった。一番最初のリバウンドで彼が突き指をしてしまったが,6ポイントゲームを3セットやって,全部勝った。

 トレーナの勉強をしている2人の女の子がいるが,そのうちの一人Jさんと少し話しをした。彼女は選手たちがちょっとしたことでも痛がったり,すぐにすねたりするので,赤ん坊のようだと言っていた。おそらくトレーナーのSさんともそんな話しをしているのだろう。

 その後,4時30分近くになって練習が始まった。今日から,新しいアシスタントコーチのSSさんが加わった。SSコーチはオーストラリアのプロチームのコーチを3年間していたとのこと。

 練習はいつもの流れであったが,とにかくちょっと動くとすぐにSコーチの話が入る。熱心なのは分かるが,こんなに細切れでは選手たちも大変だ。ただ,KJ選手が復帰して2週間ながら非常に頑張っている。彼は,純粋で,本当に手を抜くということを知らない。とにかく自分が倒れそうになるまでとことんプレイする。それだけに熱くなって自分を見失うこともあるが,今のチームには彼のような純粋さが必要だ。BL選手もディフェンスの時に声を出すようになってきた。ただ,どうしても控えの選手たちの出番が少なくなり,気温も下がっているのでちょっとかわいそうな気がする。全体としては,さすがに昨日の敗戦の尾を引いているのは否めない。重たい空気が流れていた。

 練習が終わった後に,CD選手が着任したばかりのSSコーチとJSコーチとともにシューティングを始めた。30分ぐらいの間であったが,ずいぶん気合いが入っていた。練習の前後のシューティングの時にはコーチがリバウンドをする。そして,少しずつアドバイスをしたり課題を変えたりするのである。いったいこのシューティングはコーチが選手を誘うのだろうか,選手がコーチを誘うのだろうか?あまりにも不思議だったので,ロッカールームへ引き上げるCD選手に尋ねると,自分がシュートを見てくれとコーチを誘うとの返事。汗まみれの彼の姿には気迫がこもっていた。


敗戦後の初練習(手紙より抜粋)


 さて,天国のこちらでは,昨夜NITというトーナメントの1回戦が行われ,UCLAはホームコートで延長戦の末,なんと1点差で破れました。これで,明日の夜予定されていた2回戦も中止,来週ニューヨークへ遠征に行く予定も中止,11月の末にサンクスギビングデーという休日があるのですが,そこも練習というなんともうれしい限りの状態になってきました。何しろ全米のランキングでベスト4のチームがランキングで30位にも入らないようなチームに地元で負けてしまったのですから,その恐ろしさといったらありません。その様子が全米に放映されていましたから,これからひたひたと黒い陰が近づいてくるような気がしてなりません。パック10という本番の前哨戦の大会なのですが,このトーナメントの結果は今シーズンの成績に反映されます。32才の新コーチはまずその記録に歴史的な1敗を刻んだ訳です。

 インターネットで大学バスケットボールについてのチャットがあるのですが,みなさんボロクソに書いています。今までずっとUCLAをこよなく愛してこられたファンの方々がUCLAから離れようとなさっています。大学新聞も徹底していて,勝つとトップで写真入りの記事が出るのですが,今日の新聞には小さく得点が掲載されただけで,何のコメントもありません。

 今日の練習もさすがに尾を引いていてアシスタントコーチの声だけがなんとなくむなしく昨夜のままになっている会場に響いていました。ヘッドコーチも選手もほとんど僕と目をあわせようとしません。ただ,マネージャーだけがいつも以上に明るく,なんだかヤケになっているような感じでした。そんな中,空席になっていた1つのアシスタントコーチの籍にまたまた僕より若いコーチが今日から着任しました。また,人間関係づくりをしなければいけないのかと思うと何となく憂鬱で,もうどうでもいいやという気にもなっています。

 長いこと密着していて選手やスタッフの気持ちが痛いほどわかるだけに,何とも対応しにくい状態です。とにかくUCLAには全米No.1になってもらいたいという気持ちには変わりないのですが,今日の様子を見ているともう少し何とかならないかとヤキモキしてしまいます。だからと言って突然「やっぱり中学校や高校の様子が見たいのでどこか紹介してくれ!」とも言えないし,勝手に休む訳にもいかず,まあ,やっぱりなるようにしかならないというところでしょう。

 とにかくこれだけ能力のある選手が集まって,環境が整っていても勝てないのだから,茨城大学は何て偉大なんだろうと思います。そういう意味では本当に今まで自分がやってきたことが間違っていなかったと確信することができて良かったのかもしれません。ただ,なにしろ貧乏性なもので,もったいなくてしょうがないのです。もう少しなんとかなると思うのですが,まだまだ僕が計り知れない何かがあるようです。そんなことを知っても何にもならないと思うのですが,そのうち分かるかもしれません。そうなったら,ちょうど研究テーマも「バスケットボールの構造分析」ということですから,技術や戦術などの構造ではなく裏側に潜む黒い陰の構造でも分析してみようかと思う次第です。