vsアリゾナ・ステイト大(1/16/1997木)
午前中は,赤ん坊の面倒を見ながらインターネットのNCAA情報をプリントアウト。午後はシューティングを見た後,UCLAショップの本屋でアメリカ人のものの考え方,特に強さに対する価値観みたいなことが書いてある本はないかを探した。結局見つからなかったが,『痛みの中の身体』という本を見つけたのでそれを購入した。僕の前に並んでいた人はUCLAショップの会員券見せて本を購入していたが,なんと20%引きになっていた。生協と同じなのだろう。
Jさんがオフィスに帰ってきた。UCLAバスケットをどう思うというので,僕は「難しい質問だ。ただ,今は選手がコーチを越えつつあるように思う。」と言ったら,彼はしきりにアシスタントの人選について語り始めた。Sコーチがアシスタントに年上のもっと経験を積んだ人を呼べばよかったのに,同年代のSSコーチを呼んだのはまずかったというのである。確かにその通りのような気がする。SSコーチをはじめJコーチやMコーチもSコーチにいろいろと言いたいことがあるのだと思うが,やはり同年代だとなかなかうまく話を持っていけていないように思うのである。
僕は,Jさんにかねてから思っていた西海岸と東海岸のコーチング・スタイルの違いについて尋ねた。すると,彼も違いがあると思うという。つまり,東海岸の方は選手がある特定の部分のスペシャリストであることが多く,駒として使うような形が多いが,西海岸の選手たちはオールラウンドの選手が多く,どちらかというと彼らの能力をうまくかみ合わせながら戦うというのである。
僕はJさんに,今のSコーチはその両者のスタイルがごちゃ混ぜになって混乱しているのではないかと思うと話すと,なるほどそうかもしれないと言っていた。
ジム・ハリックコーチ解任事件の日の僕の様子について,Jさんは同僚に笑いながら話した。秘書の女性がJさんが来たときに「あの人は大丈夫なのか?」とささやいたらしい。それであらためてJさんが僕に「大丈夫だ。おまえはここにいられるよ。」とあのとき言いに来たのだった。ちょっとおもしろかったのは,「僕が純粋にバスケットの練習や試合だけを勉強しに来ていたのだから,ショックを受けるのも無理はない。」というようなことを同僚に話していたことである。つまり,ジム・ハリックコーチに対するバスケット以外の部分に対する評価はかなり厳しいものになっていたのだということだろう。
Jさんと分かれてからもまだ,試合まで時間があったので一度帰宅し夕食を食べてから試合に出かけた。
試合は,アリゾナ・ステイト大との対戦で,ゲームの出だしは0対7であった。Sコーチがあわててタイムアウトをとったが,僕は相手の動きや流れを見ていて今日は勝てるなぁと感じた。予想通り積極的なシュートが功を奏して前半でほぼ試合を決めたが,何と後半の出だし5分は無茶苦茶であった。これは,どう考えてもハーフタイムにSコーチが変なことを選手たちに要求したとしか思えない。実際,彼がベンチから大声で指示を出してその通りに攻めようとすると誰もシュートをしなくなってしまうのである。どうして,彼はそのことに気がつかないのだろうか?彼が頭の中で描いているオフェンスは,ボールを確実に回したりバランスを保つためのもので,攻撃するということはそのバランスを崩すことなのだということを理解していない。選手たちの個人的な踏ん張りで勝っているが,このままの状態だと,相手がちょっとでも自分たちと同程度かそれよりもよいシステムだと為す術がなくなってしまうに違いない。