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ゲームで育つ選手たち(2/8/1997土)


 昨日,息子のコーチから電話がありどうしても今日の試合には来て欲しいとのこと。どうやら6人揃わないと試合が出来ないらしい。息子が風邪で学校を休んでいることを伝えると練習はいいから試合だけでも来てくれということだったらしい。息子もだいぶ元気になっているので今日の試合は少し出場時間を減らしてもらった。どうやら昨日攻撃の仕方を練習したらしく攻撃の時のポジションを決めたらしい。比較的上手な2人をボール運びとローポストへ配置し,もう一人パスのできる子をそのサイドのフォワードに,あとの2人を逆サイドへ配置してリバウンドとガードに専念させようというものであった。僕はすぐにコーチの意図が分かったので,息子には逆サイドのコーナーにいてリバウンドとディフェンスを頑張るように伝えた。息子はこのチームの中では中位の身体の大きさだが,線が細いのでそんなに力強くプレイすることはできない。本人はとにかくシュートを決めたくてしかたがない様子だが,テレビやUCLAの試合を見て覚えたらしく,本当にいち早くディフェンスに戻るし,よく周りを見て他の人の分までディフェンスしている。シュートやドリブルはまだあまり慣れないので他の子の方が上手だが,あのディフェンスの感覚はなかなかどうしてたいしたものである。公園に行っても一人でずっとシュート練習をしているし,最近は学校でもバスケットをして遊んでいるらしい。日本でファミコンやお絵かきに熱中していた姿に比べると信じられないぐらい活動的になった。それだけでもこのリーグに入れた甲斐があった。

 午後スタンフォードとの試合があった。1月にスタンフォードに大敗しているだけに気合いの入る一戦である。ただ,あまりにも昨日の練習がすっきりしないものだったので僕はどうなるのか予想できなかった。ところがポーリー・パビリオンに入ったとたんに本当にすごい観客の熱気が伝わってきて,これは一気に行ってしまうのではないかと思えるような応援であった。CO選手のお兄さんも駆けつけていて,司会者は彼らを効果的に紹介し,試合が始まる前から本当に盛り上がっていた。今日の試合は何が何でも負けられないということを観客の一人ひとりが十分理解した上での応援だろう。

 スタンフォードも勝ちを意識したのかアウトサイドシュートに堅さが見られ,前半でほぼ試合は決まったように感じたが,どうもコーチ陣たちの不安がプレイヤーにも伝わっていて抜けきれなかったようである。後半に入りJH選手がアウトサイドからシュートを決め,続いてTB選手の3ポイントが決まったあたりでやっと抜け出した感じであった。こうなると後は離れる一方である。

 それにしても選手たちはゲーム慣れしている。ゲームで育ったとしか言いようがない。結局,UCLAの練習で築き上げてきたプレイというよりも,小さい時からゲームでもまれてきたプレイが染みついている。特にゴール下でのあのパスは教えて出来るものではない。練習がどんなに貧弱でも,ゲームになると身体的にも精神的にも神業的に自分自身を調整してしまうのだから,本当にうらやましい限りである。