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番外編:グランドキャニオン(2/14/1997金)


 目が覚めると何と9時であった。すぐに支度をし,フロントにタクシーを呼んで貰うように頼んだ。9時30分にホテルを出て,空港へ。タクシーの運転手にグランドキャニオンへはどれくらいか?を尋ねると5・6時間だという。昨夜の運転手より時間が短い。どうするか迷ったがとにかく行ってみることにした。

 空港でレンタカーを借りたが,車両保険の代金が45ドルぐらいかかり結局2日間で160ドルもした。結構高い。シボレーのコンパクトカーで久しぶりの低い視線にしばらく慣れなかった。この車は本当にいろいろと考えられていていろんなことが自動になっていた。パーキングからドライブにシフトすると自動的にドアがロックされたり,エンジンを切るとロックが解除されたり,ルームライトが必要な時についたり消えたりである。一番気になったのが昼間でもライトがついていることである。当初気がつかなかったが前の車のバンパーに映っていて気がついた。消そうと思うが何とどこを探してもスイッチがない。消せないのである。なるほどこれで昼間でもライトをつけて走っている車が多いわけである。本人の意思とは無関係に車がそういう造りになっているのである。

 フェニックスで休憩するつもりだったが,一気にフラッグスタッフまで行くことにした。途中,車で家ごと運んでいたりしてずいぶんおもしろい光景にであうことができた。フラッグスタッフについてハンバーガーを食べ,持ってきたAAAの案内を見るとここから1時間半ぐらいでグランドキャニオンへ行けることがわかった。ホテルにチェックインしてから向かおうかとも思ったが,どういう展開になるかわからなかったのでそれは止め,一路グランドキャニオンへ。途中ずいぶん雪が残っている林の中を通った。とにかく途中には何もない。やっとグランドキャニオン空港のあたりからホテルやらお店やらがあったが,そこからグランドキャニオンへ行く途中で何と20ドルも観光料をとられてしまった。これは予想外である。ビジターセンターへ向かい,案内の人に日の入り時刻を尋ねると午後6時9分とのこと。その時どこから見るのが良いか尋ねるがどこでも美しいとの返事。私は一番奥のポイントが好きだと行っていたので,その時刻にそこへ着くように計画を立ててグランドキャニオンを見て回ることにした。

 グランドキャニオンは本当にでかい。とにかく見渡す限り谷が広がっているのである。その縁を歩けるようになっているが,特にフェンスなどはない。落ちようと思えばどこからでも谷底へ落ちることができる。日本だったらおそらくひたすら手すりか何か作るだろうが,このでかさはそんなことをしようとすることすら許さない。何かの間違いで落ちてしまうこともあるだろうが,この国ではそれはそれで本人の責任なのである。ただ,いくつか谷を眺めるポイントがあってそこには手すりがついていた。このポイントごとに名前がついていて駐車場があり車でも見て回れるようになっている。それぞれ簡単な説明が書いてあり,警告文は日本語を含め五カ国語ぐらいで書いてあった。トレイルという小道が谷底まで続いている。日帰りはハードで死者が出ているからやめるようにとの警告があった。途中でキャンプしたり,下のロッジに宿泊したりしながら歩くらしい。

 何カ所かのポイントから谷を眺める。微妙に色合いが変化していく。サンセットまでその変化をビデオに納めようと試みたが,谷底の美しさもさることながら地平線に夕日が沈んでいく様子に引き込まれてしまい,サンセットの瞬間グランドキャニオンから光が消えるところを撮影することが出来なかった。普通の人はその様子を見にここへ来るのだろうが,起伏の激しい日本に住んでいる僕にとっては横一線に広がる大地に夕日が沈んでいく様が刺激的であった。

 ビジターセンターで教えてもらったウィリアムスの安いモーテルに泊まり,明日の午前中もう一度西側の縁を車で回ろうと考えた。しかし,意外に距離があることに気づき,疲れも出てきたのでフラッグスタッフで宿泊し,明日の午前中はゆっくりとフェニックスに向かうことにした。