UCLA選手たちの2度の成長(2/20/1997木)
・さて,先日ご連絡した臨時ヘッドコーチのスティーブ・ラビンコーチが2月11日にUCLAと正式なヘッドコーチとして4年契約を結びました。またもやメディアを騒がせています。新聞の論調も2つに分かれ,彼のやり方を学ぶべきだというものと彼の実績のどこを評価すれば4年契約になるのか?というものです。UCLAとしては彼以外にもずいぶんコンタクトしていたようですが,結局突然解任してしまうような大学には行きたくないと断られたのかもしれません。そうこうしているうちに来年の新人獲得のためには,どうしても正式なヘッドコーチを決める必要に迫られたわけです。ただ,4年契約というのがちょっと驚きです。
チームは,その2日後のアリゾナ遠征で貴重な勝利を納めたのでパック10で優勝する気配が濃厚です。ランキングも突然17位に浮上してきました。
私はこのシーズンに入って選手たちの意識が2度ほど大きく変化したのを感じました。1度目はシーズン当初負けが続きランキングがなくなり,パック10が始まる直前です。スティーブ・ラビンコーチのイライラが選手たちを失望させ,選手たちが彼を乗り越えていろいろとやり始めた時です。パック10に入り選手たちがベンチを頼って競り負けるというケースが何度かありましたが,他のチームも星を落としていたので何とか上位をキープしていました。
2度目は,2月11日の記者会見以降です。どう判断してよいか分かりませんが,シーズン開幕前から大学を途中でやめてNBA入りするのではないかと噂されていた3人の顔つきが変わりました。彼らは記者の取材に対しては「パック10で優勝することしか考えていない」などと言っていますが,「来シーズンもスティーブ・ラビンコーチのもとでプレイをするのはゴメンだ」と思っているのかもしれません。
スティーブ・ラビンコーチも正式契約して少し余裕ができたのか,表情も穏やかになった感じです。このままファイナル4まで突っ走り,NCAAの歴史に新しい記録を残すのかどうかは,図らずも意図を全く異にした選手たちが頑張るかどうかにかかっています。
いずれにしても,シーズン中ばかりでなくシーズンが終わってからのコーチと選手の動向が気になるところです。本当に勉強になります。
今回の騒動を通していろいろなことを学んでいますが,現在一番気になっているのは,レギュラー以外の選手たちの様子です。チーム練習は14名,このうちベンチ入りは12名,試合に出るのは8名です。ですから6名の選手たちが,宙ぶらりんの状態です。練習はとにかくレギュラー陣の体調に合わせて休みが多くなるばかりです。練習中も見ているシーンが多くなり,正直なところ彼らはほとんど育っていません。コーチ陣はとにかく勝つことに躍起になっていますから,レギュラー陣とうまくやっていくことを第一に考えています。そういう状況の中で彼らはどういう意識でいるのか?これからどうするつもりなのか?が気になっています。シーズンが終わったらそのあたりについて尋ねてみたいと思っています。
アリゾナ遠征の様子を見に行ってきました。アウェイの様子を1回ぐらいは見てみたいと思い,チケットを購入しチームのスケジュールを教えてもらって自分で勝手に見てきました。当日の練習の様子,ホテルで勉強している様子,プリゲームミールの様子,食後の説教の様子,テーピングの様子などを見ることができました。期せずして帰りの飛行機を彼らが予定の便より早めたのでちょうど同じ飛行機になり,飛行機の中でのコーチや選手たちの様子も知ることができました。
また,一番の収穫はバスケットボール・オフィスのアドミニストレーターのDさんの上にボス(アスレティック・デパートメントのナンバー4)がいるということが分かったことです。Mさんですが,彼が遠征のお目付役のようで,チームの様子を逐一チェックしていました。彼は僕のことを知らされていなかったようで,ちょっと煙たそうな顔で僕を見ていましたが,一応挨拶しておきました。アスレティック・デパートメントの体質が少し垣間見れたように思います。
だいたい雰囲気が分かったので,今度はトーナメントを見れるかどうかちょっと打診してみようと思っています。ただ,あまり出過ぎるとすぐに痛い目に合うので,気をつけます。
半年が過ぎましたが,今だに日本にいるとき以上に気を使っています。いろんな出来事があって特別なシーズンだからだと思いますが,僕のような人間にはアメリカは向かないようです。本当にドライな人間関係ですね。