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満ち足りた雰囲気(2/25/1997火)


 今日の練習も遠いところから黙ってみていた。何だかいつもと雰囲気が変わった。この3連勝がそうさせたに違いないが,まだ,何も得ていないのにコーチも選手も満たされてしまったように感じた。ハングリーさ,激しさ,危機感みたいなものがどこかへ行ってしまったように思う。

 この国のバスケットボールでは,メディアが計り知れない力を持っている。僕自身もずいぶんメディアに惑わされてきた。とくにあのランキングは,知らず知らずのうちに僕らの意識に影響を及ぼしている。ランキングがさがれば何となく寂しい感じがするし,ランキングが上がればうれしい。しかし,あのランキングに惑わされてはいけない。あれは,観客が全米に広がっている多くの大学を見渡し,楽しむための材料を提供しているのであって,当人たちには全く関係のない話しである。

 練習終了後,スティーブ・ラビンコーチがはじめて楽しそうにシューティングをしていた。やはりかなり満ち足りた気持ちになっているようだ。無理もない。そこで,眉間にしわを寄せる必要はないが,眉間を開いてよく選手たちを見なければならない。そして,チーム全体を包み込むような意識が必要だ。

 CD選手の縄跳びを除いて,他の選手たちは練習が終了した後すぐにロッカー室へ入っていきおそらくデューク戦を思い出しながら話しに花を咲かせていたにちがいない。リフティングになかなかやってこなかった。Yコーチもちゃんと心得ているようで,2週間ぶりのリフティングなので無理をさせないようにしていた。さすがだ。

 SSコーチがやってきたので,今日の練習では何かが足りないような気がすると言った。彼も心得ているらしく僕の言いたいことが分かったようだ。少なからず彼も同じことを感じていたに違いない。


日本食とエクササイズ


 練習終了後,ウッデン・センターに行くとA君がぼーっとバスケットの試合を見ていた。彼の隣に座り,コーチになるつもりか?と尋ねると「分からない」と言う。コーチという職業が非常に不安定であり,いろいろと難しい面を持っていることを感じているようだ。その後,僕はステップマシン,彼はウェイト・トレーニングをしていた。ステップマシンが終わり帰りかけたら彼が,マットの上で腹筋をやっている。彼の膝は僕と1対1をして以来,まだ回復していない。汗まみれになって集中して腹筋をやっている姿に,どうしてこうして一人ひとりが自分で自分の身体を鍛える習慣がついているのだろうと不思議に思った。周囲には溢れんばかりの学生たちが腕立て伏せやら自転車こぎやらをしている。日本のようにやらされてやるという雰囲気はみじんもない。

 A君とウッデン・センターの外に出ながら,日本ではこんなにたくさんの人がエクササイズをすることはない。と話したら,日本食はヘルシーなんだろう?と言う。なるほど,確かにそうだ。僕らもそうだが,この国に来ても食習慣だけは変えられない。つまり,日本食から離れられないのである。それと同様にこの国の人たちもこの国の食習慣から逃れることはできない。つまり,ファットでボリュームたっぷりの食習慣から逃れることはできないのである。おそらくそういう食習慣がたたってみんなが肥満に悩まされた時代があったに違いない。そこで,さまざまなエクササイズが開発され,みんながエクササイズの必要性に迫られたのだ。つまり,食習慣を変えられない以上,一人一人がエクササイズをせざるを得ないのである。日本の場合,ヘルシーな食事で適度な日常生活を送っていれば極端に太ることはない。したがって,無理に汗をかく必要もないのである。こんなあたりまえのことに気がつかなかった。

 しかし,今では日本でも食習慣が変わりつつある。それに合わせて今後エクササイズの重要性が間違いなく認識され,この国のように人にやらされるのではなく,自分からエクササイズをやるようになるに違いない。そういう意識を育てる体育が必要である。